Life must go on

旅行と舞台とパンと読書とkindleなど、好きなものについてつらつらと綴っていきます。

歌舞伎座の魅力と歌舞伎のススメ

先日、初めて歌舞伎座を訪れた。もちろん目当ては六月大歌舞伎。

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古典芸能に触れることで自身の世界を広げられるという期待もあったが、それ以上に歌舞伎を観なくてはという根拠のない使命感に満たされ、開場より1時間前にチケットを手にすべく歌舞伎座の列に並んだ。初めての歌舞伎観劇にふさわしいと選んだ席は「一幕見席」。こちらは3,4幕で構成される昼の部、夜の部それぞれのチケットを幕ごとに当日購入できる初心者に優しいものとなっている。一幕見席は90席と立ち見60名という150枚限定の当日券である。昼の部11時開演に合わせて10時半から販売されるが、9時半の時点で15人ほど並んでいた。一幕ごとに値段が設定されているが、通しで買っても3階B席の4000円を超えない設定になっている。六月大歌舞伎昼の部は妹背山婦女庭訓1700円、分屋600円、野晒悟助1700円だった。

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事前に調べたところでは、歌舞伎座内では3倍のオペラグラスは買えるが、4階席からだと6倍のオペラグラスが必要だとの情報もあったが、ニューヨークのメトロポリタンオペラやイタリア、ヴェローナの野外オペラを思い出せば、好きな役者の細かな表情を捉えたいという欲求が我慢できれば、オペラグラス無しでも十分に鑑賞ができると思った。

 

さて、歌舞伎座一幕見席はチケット購入後にエレベーターで4階まで上がる。そのため、歌舞伎座内を見ることはできないが、それでも目の前に広がる緞帳には興奮を覚えたし、時に聞こえる拍子木の音に、俳優さんの動きが想像できて開演まであっという間だった。また、筋書(パンフレット)を1300円で購入し、あらすじにざっと目を通すことで、心の準備も合わせてすることができた。

 

妹背山婦女庭訓が最初の歌舞伎観劇で本当に良かったと思う。幕が開くとすぐに入鹿と女官、そして荒巻弥藤次、宮越玄蕃が目に入り、三味線の音に夢中になって見ていた。一幕は2時間近くあったが、本当にあっという間に終わってしまった。驚いたのは、台詞はかなり聞き取れるし、笑えるところも散りばめられていることだ。音声ガイドを借りるか迷ったし、音声ガイドを借りなかったことによる不理解の部分を考慮しても、歌舞伎の面白さを一幕で知ってしまった。ニ幕の文屋は短い舞踏だが、官女と康秀の問答が非常に興味深く、そして三味線の音も楽しく、黒衣の動きも追いたくなる舞台だった。

 

歌舞伎を観劇したら、ぜひ寄りたいのが、B2階のタリーズ歌舞伎座の瓦を見たり、隈取りソイラテをいただいたりすることができる。私はここで、観たばかりの歌舞伎の振り返りと、次の歌舞伎観劇予定を組んだ。

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昨日6月大歌舞伎が千穐楽を迎えられたということで、おめでとうございます。来月も昼の部、夜の部を丸ごと観るのは厳しそうだが、歌舞伎座には足を運びたいとウズウズしている。

 

七月は大阪松竹座七月大歌舞伎に行く予定にしている。楽しみが待っているという状況がとても心地良い。

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あやめ十八番『ゲイシャパラソル』を観劇しました

2018年6月9日から17日までの2週間に渡って再演されたあやめ十八番の第10回公演『ゲイシャパラソル』@高円寺・座の墨組千穐楽を観にいきました。舞台を見るときには、戯曲を読み込んでから観ることが多いですが、今回は劇場で台本を販売しているということで、観劇後にじっくりと読み返し、漸く感想をまとめることができました。

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恋愛を軸に、国の衰退と名前の持つ意味などが絡み、観たものに、あなたのアイデンティティを支えているものは何かと問いかけているような不思議な後味を残す作品でした。

 

まず、時代設定が平成60年という今から少し先になっています。この戯曲が書かれたとき、すでにこの年号はここまで続かないと分かっていただろうし、再演が決まった今年、すでに平成の終わりが見えていたので、実際には存在し得ない時代だと認識して開演を迎えられたため、謂わばファンタジーとして、容易には起こらないであろう戸籍売買の話題にも抵抗なく入り込むことができました。西暦ではなく和暦が用いられたことで、江戸の意気や深川芸者を中心に据えることに違和感が感じられなかったのかもしれませんが、とにかく不思議なことに、未来設定でありながらも、過去の要素が存分に持ち込まれ、そして現代社会の行き着く先を見せる芝居だったと感動しています。未来と過去なのに、間違いなく現代を切り取ったと感じさせる台詞と演出が、何度もそれで良いのかと問いかけてきます。ラブストーリーでありながら、社会派な面も兼ね備えていると感じました。

 

戸籍売買は、お金のためなら日本国籍を売ってしまうという非常にセンシティブな話題でありながら、柳屋で働く人は仇吉を除き皆戸籍を売り払い、中国名を得、さらには芸者名で生活しています。名前の持つ意味や国籍、日本人としてのアイデンティティはどうなってしまうのか、非常に興味を駆り立てられました。それは行政の効率化のためにマイナンバー制度が導入されるときにも、ナンバリングされて、自身の情報が串刺しになるのであれば、名前が持つ意味はあるのか、などと話した記憶が蘇ったこともありますが、何より『ゲイシャパラソル』の中で、お金がある人は日本人として生き、金で戸籍を買い戻したエピソードを挟みながら、さらに日本人として名前を売らなかった仇吉(後に名前を売らなかった所以が語られますが)を引き受けるのですが、お金に困り、日本人としてのアイデンティティをお金と引き換えに手放した人に待っているのは、お貰いさんとして一生を終えるという人生であり、貧困やホームレス問題と富裕層の生活が並行して描かれるというなんとも厳しい現代社会の描き方だと感じました。

 

しかし、戸籍を手放しながらも、柳屋で喜助と芸名をもらって働く太鼓持ちは、お金がなくても、日本人としてのアイデンティティを失っても、柳屋で自分の居場所を見つけて恋をし、思いのままに猫と戯れたり、稽古場を覗き見したり、人間としての生を全うしようと必死に命を燃やしながら生きているように、わたしの目には映りました。だからこそ、作中歌トニー谷さんの『あんたのお名前なァんてェの』にはドキッとしました。日本人としてのアイデンティティを確立してはいるけれど、私は一体何者なのかと思ったとき、国籍の持つ意味を考えずにはいられませんでした。

 

さらに、舞台に華を添える和傘もまた、中国から伝わったものが、和紙や竹を使用し日本の美しい傘として伝統を築いてきたことを思うと、伝統工芸の後継者問題や材料費の高騰問題と、傘職人である国原大呉が戸籍を売らなければならなかったことを重ねてしまいます。

 

演出でニクいと感じたのは、喜助が染太郎に切り火をかける場面です。カメラのシャッター音や紙をちぎる音にも効果音をつける演出なのに、ここは浜端ヨウヘイさんの演技だけでした。自らお金のために不見転芸者の道を進むことにした染太郎への清めの火に胸が締め付けられる思いでした。

 

今回の再演は紅組と墨組のダブルキャストであり、私は墨組のみの観劇となりましたが、どの役者さんも非常に個性が立つ演技で、大千穐楽を迎えた今、両方を見比べたかったと後悔が残ります。ただ、DVDが発売されるということで、見返すことができるのが楽しみです。

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追記

終演後に数名の役者さんとお話し、サインを頂くことができましたが、ステージ上と変わらぬ空気感で、役者さんの特性を活かす演出だったのだと感じました。また、公演パンフレットが完売で、後日郵送という対応をしてくださり、非常にありがたかったです。先日届き、早速拝見すると、堀越涼さんが『ゲイシャパラソル』を書いた時にはまだ平成が続くと考えられていたこと、そしてたくさんのキーワードを散りばめ、それが集まって一つのストーリーを作り上げたかったこと、ラブストーリーを書く時に何らかの要因によって影響を受けた2人の関係を描きたいということなど、非常に盛りだくさんでした。

CHESS THE MUSICALとDealer's Choice

さて、本日もミュージカルについて。ただ今回は、出演者のあれやこれやではなく、ふと共通したことに気づいて思ったことを綴ろうと思います。

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CHESS THE MUSICALはBroadwayで転けた後にコンサートとして日本でも2回公演が行われましたが、ミュージカルとしては日本初演。大阪での1週間という公演期間になんとか滑り込んで観劇してきました。このミュージカルの『Anthem』という曲は様々な人に歌われてきたので、耳にした方も多いのではないでしょうか。

www.youtube.co(m

(一番好きなJohn Owen-JonesのAnthemを張り付けておきます。)

 

今回はキャストに田代万里生くんの名前を見たときから、仕事の都合がつかないものかやきもきして過ごしていましたが、大阪のシアタードラマシティーは会場が狭く、公演2週間前に取ったチケットでも18列目と、オペラグラスなしでもはっきりと見ることができました。

 

さて、田代万里生くんは今年の2月に活動休止になった男性ボーカルグループ『ESCOLTA』のメンバーで、絶対音感を持ち、外れた音を聞くと、絵具の様々な色が混じってグレーのような色が見えるというエピソードがあることからも、安心して歌を聴くことができるくらいに歌が上手いのです。そして何より勉強熱心で、今回もCHESSのアービター役に抜擢されてから、まずはルールも知らないチェスについて学ぼうと本を数冊購入したけれど、周りのスタッフに聞くと、「俺も知らない」と言われたと笑い話として話していたようです。

 

このエピソードで、はっとしました。以前ロンドンの大学で単位履修生としていくつか講義を受けた中で、Patrick MarberのDealer's Choiceという作品を取り上げ、様々な角度から分析するというものがありました。Dealer's Choiceは6人の男性が親子のあり方などについて、ポーカーをしながら会話を繰り広げる作品で、日本でも公演されたそうです。タイトルからもわかるように、作品にはポーカーが必須です。でも果たして観客側にポーカーの知識が必要なのか、という問いに90分間のセミナーで語り尽くしたように記憶しています。結論としては、多少分かりにくい言葉もあるかもしれないが、ポーカーを使って描きたかったものは、ポーカーの世界ではないということに落ち着きましたが、非常に面白い議論でした。当時のメモがでてきたら、他のアイディアも紹介したいくらいです。

 

Dealer's Choice (Modern Classics)

Dealer's Choice (Modern Classics)

 

 

そして今回のCHESS。私は全くチェスのルールを知りません。東西冷戦の象徴としてよくチェスか用いられるということも、パンフレットを読んで初めて知りました。チェスの大会の場面ではあるけれど、ルールではなく、チェス盤に乗っている駒さえ意識できれば、運命に翻弄される人生に共感、もしくは自己の生き方と重ねることができる作品だと感じました。

幸せミュージカルTOP HAT観劇☻

以前の更新から2年弱。それほど大きな変化もなく、楽しいことも辛いこともそこそこに日々を送っていました。

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さて、昨日はTOP HATの前楽に行ってきました。仕事の都合でなかなかチケットを取ることができず、二週間前に一か八かで取ったチケットは2階席ではありましたが、圧巻のダンスパフォーマンス全体を観られるという意味では、なかなか良い席だったと思います。

 

DVDを手に取ることもなく、『正統派ミュージカル』ということ以外、何の予備知識もないままの観劇でしたが、わかりやすいストーリー展開とタップダンスを中心とする華麗なダンスにあっという間に引き込まれ、気がついたら幕間でした。

 

全編英語のため、ステージ両サイドに日本語字幕がでていましたが、ステージに釘付けになっていたため、ロンドンが舞台なのにホテル名が「オオサカ」となっているのが気になった以外はあまり見ることもありませんでした。(イタリアのホテルに場面が変わった時のホテル名「ヴェネチア」を除いて)100%聴き取れているわけではないので、復習をしたいところですが、残念ながら本日千秋楽ということで、もう一度観たいという願いは叶いませんでした。ただ、日本でTOP HATを上演するのは非常に厳しいと思うので、BW,WEでいずれ観られることを期待していようと思います。やはり、1935年のミュージカルということもあり、衣装は当時のドレスだし、加えて当時の文化的背景を知った上で演じて歌って踊らないといけないわけです。初演当時の演出で作品を観衆に観せ続けることの意味を考えた時間でもありました。(これはいつになるかわかりませんが、いずれレポをするであろうCHESSを同じ日に観劇したから余計に感じていることだと思います。)

 

アラン・バーキットとシャーロット・グーチの息がぴったりの演技とダンスに兎に角圧倒される舞台でした。ドレスもターンを意識したカットで、ダンスシーンが大変華々しく、いつまでも続いて欲しいと内心思っていました。カーテンコールのみ写真撮影が許可されていたので、数枚撮りました。シャーロットが色白過ぎて照明と合間って飛んでしまっていますが、雰囲気は伝わると思います。

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最初から最後まで幸せな気持ちで楽しめるミュージカル作品だし、楽曲も口ずさめるものもあるし、もっと浸透してもいいのではないかとも思いました。ただ、Billy Eliotが日本で上演されていないように、ダンス&歌がネックなのかもしれません。パーティーが生活に根付いていませんものね。

 

悩んだけれど、やはり1935 年のニューマスター版DVDを購入して、振り返りをしたいと思います。こちらはこちらですばらしい作品のようですが、同じ作品をミュージカル観劇が先か映画が先かで捉え方が変わると聞いたので、鑑賞前に考えをまとめようと思います。

 

 

追記

このエントリーのすぐ後にBilly Eliotの日本公演が発表され、子役の募集が発表されました。長期に渡るダンスの練習期間を経て、2017年7月から11月まで、東京はTBS赤坂ACTシアター、大阪は梅田芸術劇場で公演がありました。最高のパフォーマンスで、「団結!団結!」と日本語の響きに笑いそうになるも、ロンドンで観た時と同じ感度が押し寄せてきました。

お久しぶりです

気がつけば1年以上も何も書き綴ることなくここまできてしまいました。

振り返ってみると、週に1回パンを焼き、週末にはドリップ珈琲を楽しみ、たまにイングリッシュブレックファーストを作り、大好きな音楽に触れているうちに、あっという間に1年が過ぎていました。

Twitterで140字の制限がある方が思考を整理できたというのも事実です。感想や意見のやり取りも楽ですから。

しかし、ここにきて、Twitterと連携をしているからだと思いますが、一定数のアクセスがあることに気づき、なんだか大切な機会を失っているように感じたのです。

仕事に忙殺され、大切な瞬間を逃さないように、Twitterも合わせてこれからもゆるゆるとアップしたいと思います。

日田温泉で出会ったもの②

忙しいときには、ご飯が餌のようになりがちです。空腹を満たせば何でもよく、作業しながら食事を終えてしまうことも。なんともひどいありさまです。ただそんな粗末な食事に彩りを与えてくれるものがあります。

ビールです☻

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サッポロビール日田工事に行ってきました!
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今晩は取り寄せたサッポロクラシックをいただきます。
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日田温泉で出会ったもの。

海外旅行で求めるものと、国内旅行で求めるものは全く違います。文化的刺激を受けたいときにはやはりブロードウェイやウエストエンドに行きたいし、ミュージカルやオペラ、美術館三昧で滞在を満喫したいという思いが強くあります。

国内旅行ではどうしても癒やしを求めてしまうし、美味しいものとの出会いを期待してしまいます。

さて、そんな思いで訪ねた日田温泉。空気もご飯も何もかもが素敵でした。

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最近では廃れる温泉街が多い中、夜はライトアップして、街全体で盛り上げようとしていました。

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美味しいものを食べると、気持ちも温かくなりますね。